最近、ドメスティックバイオレンス(以下、「DV」といいます。)が社会的な問題となり、これを原因とする離婚という話もよく聞かれます。
今回は、このようなDVの被害で悩んでおり、DVを原因として離婚を検討されている方に向けておさえておきたい知識についてご説明したいと思います。
1、増えているDVの現状
共同通信の平成27年7月24日の記事によると、昨年1月から6月の間に警視庁によせられたDVの相談件数は前年の同時期に比べて25%も増加し、2441件にものぼり、2000年に統計を取り始めて以来最多になったとのことです。また、摘発件数も約2倍の469件で暴行・傷害容疑が約89%を占めています。
DVが犯罪であるという認識が広まっていることにより相談や摘発が増えていることがこれらの統計の増加の原因になっているとも考えられますが、いずれにしても、これだけの数のDVの相談、摘発があるという事実は、知っておいて損はないでしょう。
2、DVで離婚する際に注意しておくべきことは?
まずは何より身の安全を確保することが重要です。DVの被害者が離婚を切り出すと、DV加害者は逆上して暴力をふるうというケースがよく見られます。したがって、DVを理由に離婚を切り出す際は別居してからにすべきであり、また別居の準備について相手に悟られないよう細心の注意を払って準備を進める必要があるといえます。
そして、後にも説明しますが、調停や裁判ではDVの被害を受けていたという証拠が必要です。DVで怪我をした際に診断書をとっておく、写真に撮っておく、DVの状況をメモに記録しておく、会話を録音する等、DVの証拠を残すことも重要です。
3、DVを理由に離婚する際の流れ
大まかにいえば、DV以外を理由に離婚する場合と同様です。別居をしたうえで、相手方に対して離婚の協議を申し込み、離婚の話し合いを進めていくというのが通常です。もっとも、DVの場合、相手方と任意の話し合いということは困難でしょうから、弁護士に依頼し、代理人を立てたうえで調停を起こすということが通常でしょう。
また、DVの場合は、別居に際して、相手方に新しい住まいを知られたくないでしょう。4や5で触れるように、シェルターに入ったり、DV防止法に基づく保護命令の発令の申立をしたりといった方策を検討する必要もあります。
それでは、離婚までの具体的な流れについて細かくみていきましょう。
4、離婚の事前準備は?
大きく2つの事柄に分けることができます。①身を守るための別居の手続と②DVの証拠の収集です。
(1)別居について
先ほども説明したように、DVがある場合にもっとも重要なのは自分の身の安全を確保することです。離婚の話を切り出すと逆上し、暴力がエスカレートしたり、精神的に追い詰めたりとDVが悪化することが多く見られます。したがって、離婚を決意され、離婚の話し合いをしようとする場合には別居をするべきでしょう。
その際に注するべきことは、新しい住まいを相手方に知られないようにすることです。DVの加害者は新しい住まいに押し掛けて暴行を加えたり、さらには配偶者を連れ戻そうとしたりする場合があるためです。そのため、別居後の住まいとしてご実家を選ぶというのはあまりお勧めできません。
とにかく別居を急ぎたいということであれば、各地の配偶者暴力相談支援センター等の相談機関で相談し、一時的な避難施設であるシェルターに入った上で、別居先を探すのがよいでしょう。
(2)証拠収集について
いざ離婚の調停や訴訟に至った場合には、DVについての証拠を提出する必要があります。
DVをはたらく配偶者の多くは、外面はよい場合が多く、調停等であなたが「DVに遭っている」と主張するだけではなかなか信じてもらえません。あなたの主張を具体的に根拠づける証拠が必要になるのです。したがって、離婚を決意されたら、別居までになるべく客観的な証拠を残すようにしましょう。
具体的な証拠としては次のようなものが考えられます。
・DVによる怪我についての写真や診断書
・DVの様子を記録した日記
・DVをはたらかれた際の録音
・警察や相談機関での相談の記録
(3)その他
また離婚全般において必要となる準備もあります。詳細は「離婚したいと思ったら! 離婚の準備のための6つのステップ」の記事でご確認ください。
