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事実婚(内縁)を検討する場合に知っておくべき9つのこと

事実婚
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最近、事実婚や内縁といわれる男女の関係が増えているようです。

 

女性の自立や社会進出が進んだことと関係があると思われますが、正式な(法律的な)婚姻ではなくこの事実婚を選ぶことのメリットやデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか?

 

ここでは、事実婚(内縁)について知っておいた方がよいことを説明することにしていきます。

 

1、事実婚とは?内縁と事実婚は違う?

 

そもそも事実婚とはどのようなものなのでしょうか?

 

事実婚とは、婚姻届は出していないものの、実質的には夫婦同様の関係にある男女間の状態のことを言います。

 

婚姻届を提出していませんから、公的な手続面では法律的な婚姻関係にある夫婦とは区別されることが多くなりますが、事情を知らない他人から見れば夫婦関係にあるものと見えますし、本人たちも自分たちは夫婦関係にあるものと考えているのが通常です。

 

「内縁」という言葉もありますが、これは事実婚と同じ意味です。

なお、法律的には、事実婚は、①当事者間の夫婦関係を成立させようとする合意、②夫婦共同生活の存在、の2つの条件があれば成立すると考えられています。

 

2、届出婚(法律婚)との違い

 

事実婚に対して、婚姻届を提出して結婚することを届出婚(法律婚)といいますが、事実婚と届出婚とではどのような違いがあるのでしょうか?

 

(1)公的な手続面での違い

 

先ほども述べましたが、事実婚は公的な手続の場面において婚姻関係にあるものと認められないことが多々ありますが、届出婚の場合にはこのようなことはありません。

 

(2) 戸籍での違い

 

届出婚の夫婦は同一の戸籍に入りますが、事実婚の夫婦の戸籍は別々になります。事実婚は特に届出などをすることはありませんので当然のことです。

 

(3)相続での違い

 

事実婚では夫婦間に相続関係は発生しません。

 

民法は、配偶者を法定相続人としており、届出婚の夫婦は互いに法定相続人になることになりますが、事実婚状態の男女は相続の場面では法定相続人とは扱われません(もちろん、遺言により遺贈を行うことは可能です)。

 

(4)子どもの扱いでの違い

 

事実婚の夫婦間に子どもが生まれた場合、その子どもの父親が法律的に父親として扱われるためには認知が必要です。

 

また、子どもは母親の戸籍に入り、父親とは別の戸籍となることになります。届出婚の場合には、夫婦間に生まれた子供は当然にその夫婦の子どもと扱われますし、子どもは夫婦の戸籍に入ります。

 

3、同棲との違い

 

事実婚と単なる同棲は異なるものです。正式な(届出をした)婚姻関係にない男女が同居しているという点では両者は同じですが、夫婦関係にあるとの認識がある事実婚に対して、同棲はそのような認識がないものです。

 

逆に、単純に「同棲している」と周囲には言っていても、本人たちが夫婦関係にあると考えている場合には、それは事実婚に当たるということになります。

 

4、事実婚(内縁)のメリット

 

届出婚(法律婚)と比較して事実婚にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

(1) 姓の変更がない

 

現在の制度では、届出婚の場合には必ずどちらかが姓を変えて夫婦が同じ姓になり、同一の戸籍に入らなければならないこととされています。

 

現在の日本では一般的には女性側が男性側の姓を名乗ることが多くなっていますが、仕事の関係などで姓を変えたくないという場合も考えられます。

 

そのような場合にはいわゆる通称として旧姓を仕事で使うこともありますが、職業によってはそれが許されないこともあります。事実婚を選択すれば、戸籍の変動はないため、姓を変える必要もありません。

 

なお、最近問題となっている夫婦別姓が法律的に実現すれば、届出婚でもこのメリットは享受できることになるでしょうが、実現にはまだ時間がかかりそうです。

 

(2)夫婦関係を解消しても戸籍に記載されない

 

届出婚の夫婦が離婚した場合には、それぞれの戸籍に離婚した旨の記載が残ります。これに対して、事実婚の夫婦が関係を解消して別れても、戸籍には何の記載もされません。

 

(3)男女の対等な関係の維持

 

現在の日本では、結婚するときには女性が男性の家に入るというような意識がまだ残っている部分があります。女性が姓を変えることが多いのもそのあらわれと言えるかもしれません。

 

事実婚では男女いずれも姓を変える必要がなく、戸籍も別々でいることができますので、男女の対等な関係が維持できるということができるでしょう。

 

5、事実婚(内縁)のデメリット

 

一方、届出婚(法律婚)と比較して事実婚にはどのようなデメリットがあるのでしょうか?

 

(1)相続のタイミングでのデメリット

 

事実婚の夫婦は、互いに法定相続人とは扱われません。そのため、一方が死亡した場合、他方が相続できないことになります。

 

なお、このデメリットは遺言を残しておくことである程度は解消できますが、その場合でも相続税が課税されるというデメリットが残ります。(もちろん、法律婚をしていても相続税が課税される場合がありますが、控除の枠が大きいため、相続税が課税されないことも多いでしょう。)

 

(2)子どもに関するデメリット

 

先ほども挙げたとおり、事実婚の夫婦に子どもができた場合、法律的には非嫡出子(婚姻関係にない男女間の子)と扱われ、法律的な父子関係を発生させるには認知が必要です。

 

また、子どもは自動的に母親の戸籍に入り、母親の姓を名乗ることになります。さらに、届出婚では両親双方が持つ子どもの親権は、事実婚では母親が持つこととなります。その他、子どもの成長に連れて、子どもと父親の姓が異なることでの不便が多くなるおそれもあります。

 

(3)公的手続

 

公的な手続をする場合、事実婚の夫婦は様々な点で不便な思いをすることがあります。

 

例えば、税金面では、事実婚の夫婦は配偶者控除や配偶者特別控除が受けられない、相続時に不利に扱われるなどのデメリットがあります。また、事実婚でも社会保険上の被扶養者となることはできますが、届出婚の場合と違い、事実婚にあることの証明を別にする必要があり、手続が少し面倒になります。

 

(4) 社会的体面

 

増えてきたとは言っても、まだわが国では事実婚の夫婦は少数派です。以前に比べればだいぶ認知されているとは言えるでしょうが、事実婚に対する社会的認知度はまだまだだといえるでしょう。

 

したがって、届出婚でなく事実婚を選択したことについて、他人から質問されたり疑問に思われたりすることもあるかもしれません。また、家族や親族から反対されることもあるかもしれません。

 

6、事実婚(内縁)の場合、住民票はどうなる?事実婚(内縁)の証明方法

 

事実婚の形で同居を始めるとき、住民票の記載はどのようになるのでしょうか?

 

この場合、2種類の記載方法が考えられます。一つは、住民票の続柄欄に「同居人」との記載をする場合、もう一つは同じ欄に「妻(未届)」と記載する場合です。

 

ただ、住民票上の記載事項は、社会保険の手続などをする際に参考にされるものです。事実婚であることを証明する際に住民票を利用することを考えると、事実婚の場合の住民票上の続柄の記載は「妻(未届)」となっていた方がよいことになります。

 

事実婚というわけではなく、単に同棲するという場合には、「同居人」でもよいでしょう。

 

なお、夫婦それぞれを別世帯として住民登録をする方法もありますが、この方法だと事実婚を証明することが難しくなりますので、あまりお勧めはできません。

 

転入届などをする際にはこれらの点に注意して行いましょう。

 

7、事実婚(内縁)の夫婦の間の子どもは法的にどう扱われる?

 

すでに何度も触れていますが、事実婚の夫婦間に生まれた子どもは、法律上は非嫡出子として扱われます。この場合、母親と子どもとの親子関係は分娩の事実から当然に証明できますので何の手続もいりませんが、父親と子どもとの間に法律的な親子関係を生じさせるには父親が子どもを認知する必要があります

 

この認知をしないと、父親と子どもとの間に法律的な親子関係が発生せず、相続もできないことになりますので、必ず認知の手続を取りましょう。

 

なお、認知をしても、子どもの親権は母親が持つことになりますし、子どもの姓も母親の姓になります。

 

現在の法制度は、子どもとの関係の点では、事実婚は届出婚と比べて大変不便であるということができるでしょう。

 

8、事実婚(内縁)を解消した場合に慰謝料や財産分与はもらえる?

 

事実婚も、届出婚の離婚と同様に夫婦関係を解消することが考えられます。

 

事実婚の場合には婚姻届を出していませんので、届出婚のように離婚届を提出したりする必要はなく、本人同士が事実婚状態を解消すればいい(つまり同居を解消すればよい)のですが、届出婚で認められている慰謝料や財産分与などの離婚給付は事実婚でも認められるのでしょうか?

 

(1) 慰謝料

 

事実婚でも、一方当事者に夫婦関係の破たんの責任がある場合には、他方が慰謝料を請求することは認められます。

 

事実婚と届出婚は婚姻届をしたかどうかという形式面での違いがあるのみで、実質的にはいずれの場合にも夫婦であることに違いはありませんので、慰謝料についても同じように考えてよいのです。

 

(2) 財産分与

 

財産分与についても慰謝料と同様です。

 

届出婚に関する財産分与の規定(民法768条)は事実婚の場合にも準用(同じように適用)され、2人で協力して築いた財産は事実婚解消時に公平に分配することになります。

 

(3)年金分割

 

事実婚の場合にも年金分割は認められますが、届出婚の場合と異なる扱いになっています。

 

事実婚の場合、年金分割の対象期間は事実婚の開始時から解消時までの期間となりそうですが、事実婚は届出婚と違って届出がないためその期間を特定することが困難です。そのため、妻側が第3号保険者の期間(つまり扶養に入っている期間)に限って分割の対象とすることとなっています。

 

(4)養育費

 

養育費についても慰謝料や財産分与と同様に事実婚においても請求できます。

 

そもそも、養育費は子どもを育てるのにかかる費用を両親が分担するというものです。子どもの親であることは、両親が届出婚だったか事実婚だったか、ということとは関係がありませんので、事実婚であっても親である以上は養育費を負担すべきということになります。

 

(5)婚姻費用

 

事実婚の夫婦も互いに扶養の義務を負うのは届出婚と同様です。したがって、事実婚の場合にも婚姻費用の分担請求を行うことは考えられます。

 

ただし、届出婚でよくあるように、離婚が成立するまでの別居期間中の生活費として婚姻費用分担請求を行うことは、事実婚の場合には困難です。というのは、事実婚の場合には、当事者が同居を解消した時点で事実婚関係は終了することになるためです。

 

したがって、事実婚において婚姻費用分担請求が認められるのは、単身赴任や入院などのように別居が一時的なものである場合に限られるでしょう。

 

9、事実婚(内縁)の有名人

 

事実婚を選択している有名人には、F1ドライバーのジャン・アレジ氏と結婚した後藤久美子さん、映像ディレクターと結婚した椎名林檎さん、実業家と結婚した萬田久子さんなどがいます。

 

事実婚を選択したのにはそれぞれ事情があるのでしょうが、いずれも自立した女性をイメージさせる方々ですね。

 

まとめ

 

事実婚についての法律的な知識やメリット・デメリットなどをまとめてみました。

 

現在の法制度では、事実婚には様々なデメリットがあります。特に、子どもとの関係に関するデメリットは無視できないものがあります。しかし、現代の女性にとって事実婚はメリットも多いと言えるでしょう。

 

事実婚を選択する場合には、これらのメリット・デメリットを理解し、よく検討した上で決めることが必要でしょう。

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