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養育費を払わない方法はあるか。払いたくないなら知っておくべきこと

養育費
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離婚したときに、養育費について取り決めを交わしている夫婦は、離婚した夫婦の半分以下と言われており、実際に適切な養育費を受け取れているのは3割以下とも言われています。

 

そして、養育費の不払いが社会問題として取り上げられることも少なくなく、それと共に、様々な制度の改正等が検討されています。

 

養育費の不払いに対しては、銀行口座の差し押さえの手続きについて、より執行しやすくなるための法律改正案が2018年の国会に提出されるようです。

 

また、養育費の相場を決定しているといわれている養育費の算定表について、日弁連が、現在の方式では養育費の額が低いとして、従来の1.5倍程度の養育費となる新方式の算定表を2016年11月に発表しました。

 

このように、養育費の不払いに対する社会の目は厳しくなりつつあります。

とはいえ、いったん取り決めた養育費はどんなことがあっても払わなければならない、とか、養育費を支払わないなら子供に会わせないなどといった、養育費の支払い義務者に酷な要求まですべて受忍しなければならないわけではありませんし、場合によっては、養育費を支払わなくてよくなる場合もあります。

 

1、養育費を払わないとどうなるか

 

(1)養育費を払わない場合の罰則はあるか

 

養育費は、親が結婚している場合であっても、結婚していない場合であっても、また離婚した場合であっても、その子が成長していく過程においてかかる衣食住に関する費用、教育費、医療費等は親が負担しなければならないという考え方に根拠があります。実の子に対する扶養義務は民法877条第1項に、養子に対する義務は、民法820条にその法的根拠があります。

 

ただ、子の父と母である夫婦が結婚している場合や、同居している場合はそれほど問題になることはありません。

 

しかし、両親が離婚して別居する場合には、どちらが実際に子を監護養育するかということと合わせて、実際に監護養育しない方の親が、養育にかかる費用(=養育費)をどの程度負担するか、という形でしばしば問題になります。

 

離婚する場合の養育費に関する事項は、民法766条によって、まずは夫婦の協議で、協議がまとまらないときは家庭裁判所が決めることとなっています。

 

このように、養育費については、民法にその根拠があり、実際に子を監護養育する親は、もう一方の親に対して養育費を請求することができます。しかし、仮に、一方の親が養育費を支払わなかったとしても民法は特に罰則は設けていません。

 

ですから、仮に養育費を支払わなくとも、それによって、罰金や懲役などといった罰則が科せられる訳ではありません。

 

しかし、養育費といっても金銭債務ですから、定められた期限までに支払わないと、通常の借金と同じように遅延損害金が発生します。法律上の遅延損害金の利率は5%ですから、銀行預金の利率よりもはるかに高い利息といえます。

一般的には、養育費の支払いがちょっと遅れたからといって遅延損害金まで請求する場合は少ないと思いますが、何年も支払わないでいると、思わぬ金額になってしまうということがありますので、注意が必要です。

 

(2)養育費の請求方法

 

実際に子を監護養育している親が養育費を請求する方法は、債務名義がある場合とない場合で異なります。債務名義とは、支払いが滞った場合に、給与を差し押さえる等して、強制的に支払わせるための公の文書のことです。

 

①債務名義がある場合

 

債務名義がある場合とは、

 

・家庭裁判所の調停で取り決めを行った場合

・家庭裁判所の審判で養育費の金額が定められた場合

・離婚裁判の判決で養育費が決められた場合

・離婚時に公正証書によって養育費の金額が定められた場合

 

をいいます。

 

このように、裁判所や公証人役場等で養育費の金額がきちんと定められている場合は、支払いを怠った場合は、すぐに強制執行が行えることになっています

 

つまり、決められた金額の支払いを怠ってしまうと、すぐに給与や銀行口座を差し押さえられてしまう可能性があるのです。

 

 ②債務名義がない場合

 

これに対し債務名義がない場合は、一般的には電話やメール等で直接請求されるか、それでも支払わないでいると、弁護士等から内容証明によって請求される場合があります。

 

このような場合は、すぐに支払わなくても、いきなり給与や銀行口座が差し押さえられるようなことはありません。しかし、その後、調停や裁判を起こされて審判や判決で金額が定められてしまうと、債務名義がある状態となってしまい、それでも支払わないと、上記で述べたように、給与や銀行口座が差し押さえられてしまうという事態に発展してしまいます。

 

(3)養育費の不払は面会交流に影響するか

 

離婚した夫婦の間でよくあるのが、実際に子を監護養育している親が、もう一方の親に、「養育費を支払ってくれないのであれば、子供には会わせない」などといって、子供に合わせることを養育費の支払いと交換条件にすることです

 

しかしながら、子供との面会交流と養育費の支払いを交換条件とすることはできません。

 

子供との面会交流は、法律に明確な規定はありませんが、裁判実務においては、当然に認められている権利です。そして、これは、子供と同居していない親が子に会う権利であると同時に、子が親に会う権利でもあります。

 

ですから、面会交流は、親が子に暴力をふるったり、虐待したりする可能性がある場合のように、面会交流を行うことが子供のためにならない、と判断されるような例外的な場合でない限り、これを拒絶することはできません。

 

特に、近年、親が離婚した場合であっても、子供にその責任はないのだから、両親が子供にとって何が一番よいかを建設的に考えて関わっていくべきであるという考え方が推奨されてきています。

 

法務省も離婚後の面会交流についてパンフレットを作成する等して、適切に面会交流を行うことの重要性を説いています。裁判実務においても、面会交流が制限されることは少なく、面会交流を行う回数や場所、方法等をしっかりと定めて面会交流を促す方向にあるといえます。

 

ですから、養育費を支払わないからといって、面会交流が制限されることは基本的にはありません。もちろん、当事者間で、「養育費を支払わないときは面会交流できない」などと取り決めを交わしても無効ということになります。

 

2、養育費を払わなくてよくなる可能性がある場合

 

いったん夫婦間で養育費を取り決めたり、調停・裁判で養育費の額が決められたりした場合であっても、養育費を支払わなくてよい場合があります。

 

それは、離婚して子供を実際に監護養育している親が再婚し、再婚相手と子供が養子縁組をした場合であって、その再婚相手に子供を養育するだけの十分な経済力があるときです。

 

例えば、離婚して、母親が子供を実際に養育し、父親が養育費を支払っていた場合に、母親が再婚し、子供がその再婚相手と養子縁組をしたような場合です

 

この場合、養親となった再婚相手が、その子に対する第一次的な養育義務者となり、実父は第二次的な養育義務者となります。その結果、まずは、再婚相手である養親が養育義務を負い、その再婚相手に十分な経済力がない場合に、実父が養育義務を負うということになります(参考裁判例:札幌家庭裁判所小樽支部昭和46年11月11日審判等)。

 

このように、子供が一方の親の再婚相手と養子縁組した場合、その再婚相手に子を養育できるだけの十分な経済力があれば、実父は養育費を支払わなくてもよくなる場合があるのです。

 

3、養育費を減額できる可能性がある場合

 

また、親の再婚に伴って、養育費が減額される場合があります。これには2つのパターンがあります。

 

まず、子を実際に監護養育している方の親(養育費を受け取っている方の親)が再婚した場合で、子がその再婚相手と養子縁組しなかった場合です。

 

例えば、離婚して、母親が子供を実際に養育し、父親が養育費を支払っていた場合に、母親が再婚したけれども、子は再婚相手と養子縁組しなかった場合です。

 

この場合、子の養育義務者は、実母と実父であることに変わりはありませんが、実母が再婚したことにより、実母の収入が再婚相手の収入分増えたという考え方から、実母の負担割合が増えることにより、実父の負担割合が減って、養育費が減額されるという結果になる場合が一般的です。

 

次に、子を実際に監護養育していない方の親(養育費を支払っている方の親)が再婚し、再婚相手との間に子供ができた場合です。

 

例えば、離婚して、母親が子供を実際に養育し、父親が養育費を支払っていた場合に、父親が再婚し、再婚相手との間に子供ができた場合です。

 

この場合、父親は、前妻との間の子に加えて、配偶者である現在の妻とその子の扶養義務を負います。扶養義務者が増えることにより一人当たりにかけられる金額は少なくなる、という考え方から、前妻との間の子に対する養育費が減額されるということになるのです。

 

また、再婚した場合に限らず、養育費を支払っていた方の親が失業したり、給与が大幅に下がったりしたような場合も、養育費の減額が認められる場合があります。

 

4、養育費の減額を勝ち取るまでの流れ

 

上記のように、離婚した両親の再婚や、収入の変化等に伴い、養育費の支払い義務がなくなったり、減額されたりする場合があります。

 

しかし、上記のような状況になったからといって、いったん取り決めた養育費が当然に減額されるわけではありません。

 

従って、養育費を減額してもらうには、まず相手方との協議を行う必要があります。そして、協議が整わない場合には、家庭裁判所に、養育費減額の調停を申し立てることになります。

 

調停では、まず、調停委員や裁判官が間に入って話し合いを行います。それでも話し合いで解決できない場合は、裁判所が養育費の減額を認めるかどうか、また、認めるとしていくら減額できるかを審判という形で判断します。

 

このように、養育費を減額してもらうためには、減額を求める方からアクションを起こさなければなりません。特に、以前取り決めた養育費について、債務名義がある場合は、勝手に減額してしまうと、不払いとみなされて、給与や銀行口座を差し押さえられてしまう可能性があるので、注意が必要です。

 

 まとめ

 

養育費の不払いについては、世間の目が非常に厳しくなりつつあります。だからといって、過剰な要求に応える必要はありません。確かに、養育費は、子供に対する親としての義務ですからこれを支払うのは当然です。

 

ただ、いったんお金として渡してしまうと、本当に子供のために使われたかどうかわからないような場合もあります。ですから、納得して養育費を支払うためにも、その使途等について明確な報告を求めること等も大事です。

 

また、子供名義の積み立てや保険を利用して養育費替わりにする等、真に子供の将来のために利用できるものとする方法を選択するという手段もあります。

 

親である以上、養育費として一定の負担をすることは当然ですが、その額は適切かどうか、また、支払った養育費が本当に子供のために使われているかどうか、ということを常に意識することが大切といえるでしょう。

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